長女

小さいころからいろんなことを諦めてきた。一人っ子だった期間は短く、年子の弟がいる。そのあと妹も生まれた。3人兄弟の長女としては出来すぎたくらいだったと自分でも思っている。お手伝いもする、我慢もする。お姉ちゃんらしくしなさいと言われても黙って従ってきていた。

甘え方がわからない。今まで付き合った彼氏は全員、見事に浮気された。私にばれたって、お前は一人で大丈夫だと思う、だから別れようと言われた。なんで浮気されて振られなきゃならないのよ。せめて振らせてほしかった。

男の子に頼る女の子を見るとそんなことして恥ずかしくないのかと思う。その方が男受けがいいことはわかってるけれど。現に浮気相手は全員そんなクソ女だった。だけど、甘えたくなんかない。今まで全部突っぱねてきた。誰も助けてくれなかった。私はなんだって、それなりにできてしまう。

この関係は心地よかった。付き合ってるわけじゃない、だけど、私といてくれる。彼女にまったく嫉妬しないと言ったらうそになる。けれど、彼が私に言う彼女の悪口を、頭を撫でながらベットで聞くことは私にとってこの上ない幸せだった。至福のひと時、その言葉がぴったりだ。私はやっぱり二番目の女がお似合いなのかな。ぼそっとつぶやくと、彼は私の頭を撫でて言った。いつかお前の良さをわかってくれる男が現れるよ。

ああ、まただ。本当は、あなたの一番になりたいの。今までだってそう。私は一人で大丈夫なんかじゃない。あなたが居ないとダメになっちゃうの。あなたの一番にしてほしいの。してほしかったの。

そんなこと言えるわけもないから、代わりにキスをした。この関係がばれたら、きっと切られるのは私の方。彼女はひとりじゃいられないから。大丈夫、私は、大丈夫。